ラトル氏と早稲田大学交響楽団

去る2013年11月17日(日)、目下来日公演中のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者・芸術監督であるサイモン・ラトル氏による、早稲田大学交響楽団のリハーサルが行われました。このリハーサルは、2011年11月に行われた「早稲田大学交響楽団 第192回定期演奏会」でご共演いただいたシュテファン・ドール氏(ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団首席ホルン奏者)のご厚意によって実現したものです。

会場となったのは、東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル。ラトル氏に先立って発案者のドール氏が会場に姿を見せると、およそ350名の楽団員からは大きな拍手が沸き起こりました。ドール氏は会場上手のホルンパートが集まる位置へ移動し、このあと行われたラトル氏と全楽団員350名との集合写真撮影にもご参加くださいました。

20:00にラトル氏が到着なさると、すぐに舞台上に待機していた楽団員との集合写真撮影が行われ、リハーサルへと移りました。

ご指導いただいた曲は、ブルックナーの交響曲第7番、第1楽章。来日公演中のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が今まさに取り組んでいる曲目であり、当楽団も2014年3月の第195回定期演奏会で演奏する曲目です。


リハーサル開始後の映像


リハーサル風景

冒頭部分を通すと、開口一番「君たちは都会に住んでいるの?」と質問されました。「この曲の最初のトレモロは、頭に素晴らしい森や山を浮かべて欲しいんだ。今の演奏は上野みたいな音がしたよ」とご自身のイメージを語られ、「髪を丁寧に撫でるように音を出すんだ」とコンサートミストレスの髪を撫でながら説明なさいました。ラトル氏はリハーサルを通して「積極的なきついクレッシェンドではなく、山がのしかかってくるような感じにしたい」などと、「山」のイメージを繰り返し提示なさいました。

チェロとビオラの第一主題に対しては「最初の音をもっと愛して欲しい。今四角い音がしているように聞こえるけど、ハート型の音を目指して欲しいんだ」とおっしゃいました。たくさんのアドバイスになんとか応えようとする団員に「だんだん音が変わってきた、よかった」としつつも、「もっともっと自由に、ブルックナーの素晴らしい世界を表現して!」と妥協を許しません。


リハーサル風景

「ブラスの皆さん、すみません。もう少し待っていてくださいね」とおっしゃるほど、最初の弦楽器を中心とした導入部分をとても丁寧にご指導いただきました。いよいよ金管楽器が登場する場面に差し掛かると、フォルテについて「Forte means beautiful! Fortissimo means very beautiful! Three ”F” means unbelievably beautiful!!」と、ただ大きいだけの汚い音にならないよう注意なされました。一方でピアノの場面では、オーケストラの演奏を打ち切って、客席のドール氏に「聞こえました?」と問いかけます。「聞こえたよ」というドール氏の返答を聞くと、「じゃあオーケストラの音が大きすぎるんだ、髪の毛一本で弾くものだと思いなさい」と、どこまでも小さく繊細な音を要求なさいました。




リハーサル風景

約1時間半に及んだこのリハーサルでは、15歳の時に指揮を習ったというルドルフ・シュヴァルツ氏の逸話から細かなニュアンスの指摘に至るまで、非常に多岐に亘るアドバイスをいただき、ラトル氏の音楽を直に感じ取ることができた貴重な時間となりました。リハーサルの最後にラトル氏は「I just want to say…」と切り出し、「これから皆さんが為すことすべてが上手くいくよう、心からお祈りしています。音楽というのはみなさんに付いていく素晴らしいものです。一緒にこうして演奏ができた歓びに感謝します」と締めくくられました。

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