2003年 ヨーロッパ演奏旅行

今回の演奏旅行に至る経緯

「オーケストラ音楽は西洋文化の華である。東洋の地に根付いた華が生まれ故郷に里帰りをし、大輪の花を咲かせたのちに種子を落とす。そしてそれがまた新たな芽を吹くのだ。」

 これは、ドイツのある著名な新聞に掲載された当楽団についての批評です。音楽を通じての国際文化交流、これこそが私たちが海外演奏旅行を行う目的であり、そして音楽の歓びによって人々が国境を越えて理解し合い、通じ合うことが世界平和への道である、と私たちは強く信じています。この理念に基づき、歴代の楽団員は様々な努力を重ねて参りました。

 早稲田大学交響楽団はヘルベルト・フォン・カラヤン氏の招きにより、1978年の第1回の演奏旅行「ドイツ・オーストリア巡回演奏旅行」を行い、ベルリンで開催されたカラヤン財団主催の第5回国際青少年オーケストラ大会(通称・カラヤンコンクール)に出場し、全参加団体中、唯一音楽を専門にしない学生でありながら第一位を獲得し、カラヤンゴールドメダルをいただきました。私たちの海外演奏旅行はこの成功により始まったのです。

 そして、今回の「2003年ヨーロッパ演奏旅行」は、カラヤンコンクール優勝25周年を記念して「カラヤン・メモリアル」として行われるものです。

 今回の演奏旅行について、今まで演奏旅行の成功に多大なご尽力をくださった田中雅彦氏にご相談申し上げたところ、田中雅彦氏は実施に反対され、かねてから公言しておられたようにご自身の企画・制作面への関与も辞退されました。その代わりに現地での公演制作を元ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のチェロ奏者であり当楽団の名誉顧問であるルドルフ・ワインスハイマー氏に、旅行業務をOBである古関和典氏が勤務するJTBにお願いするようにご助言をいただきました。この依頼を受けワインスハイマー氏は、今回の公演を「カラヤン・メモリアル」として実施することを決めてくださいました。

 公演地は、カラヤン氏に縁の深い土地であるベルリン、ウィーン、ザルツブルクなどを中心にワインスハイマー氏が計画してくださっています。また、ウィーンのカラヤンセンター所長のウーリ・メルクレ博士は、かつてカラヤン氏の厚い信頼を受け片腕として活躍された方で、早稲田大学交響楽団のことは1976年のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の来日時以来継続的に詳しくご存知です。そのメルクレ博士が、ワインスハイマー氏の依頼を受け、全公演地を「カラヤンセンター」の主催として準備してくださいました。

 プログラムは、ワインスハイマー、メルクレ両氏の提案により、当楽団がカラヤンコンクールで演奏したプログラムであるストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」や、カラヤン氏に公開リハーサルとしてご指導していただいた「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」を演奏いたしました。

 随行指揮者としては、大阪シンフォニカー交響楽団の音楽監督・常任指揮者、ルーマニア国立放送交響楽団首席客演指揮者の曽我大介氏、2000年にミトロプーロス国際指揮者コンクールで優勝された寺岡清高氏、当楽団永久名誉顧問の田中雅彦氏をお迎えいたしました。田中雅彦氏は公式公演を指揮することに常に難色を示して来られましたが、田中雅彦氏の当楽団に対する多大なご尽力を数十年来称賛していらっしゃったメルクレ博士が、「墓場のマエストロ(ヘルベルト・フォン・カラヤン氏)が喜ぶから」と田中雅彦氏の指揮で実施されることを強く望んでおられます。田中雅彦氏は非常に苦慮しておられましたが、かつてお世話になったメルクレ氏からのリクエストということで、必要最小限の公演地のみ指揮することを決意してくださいました。

 カラヤン氏はカラヤンコンクール以来、当楽団に深い関心を寄せられ、様々なご助言や直筆のメッセージをくださるなど、私達の活動をバックアップをしてくださいました。氏は、『音楽』は平和に貢献し得る、そしてまた、若い世代間の交流と理解が平和への架け橋になるとお考えになって、こうした海外演奏旅行への道を積極的に拓いてくださいました。カラヤン氏のご尽力なくしては、今回の演奏旅行も、当楽団の今日の発展も有り得ないものであると私たちは考えております。氏への深い感謝を込めて、私たちはこの海外演奏旅行の成功に向かい最大限の努力をしていく所存でございます。

現地新聞評

  • WIESBADENES TAGBLATT紙(ヴィースバーデン公演)
    『揺るぎなきホルン』
    1978年、東京の早稲田大学交響楽団は第5回国際青少年オーケストラ大会(通称・カラヤンコンクール)にて優勝し、ヘルベルト・フォン・カラヤン・ゴールドメダルを獲得した。この国際コンクールでの優勝者はカラヤンと深く結びついており、カラヤンはこのオーケストラの東京での…
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  • SALZBURGER NACHRICHT紙(ザルツブルク公演)
    『民族を結びつける構成要素としての音楽』
     東京にある早稲田大学の多人数からなるオーケストラが、カラヤン記念演奏旅行の途上、その巨匠の生誕地であるザルツブルクを訪れた日曜日の昼、切符の完売された大祝祭演奏会場には、本格的な祝祭気分が横溢していた。…
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公演概要

■公演国・公演都市

◇ドイツ連邦共和国
・オーバーハウゼン
 Oberhausen
ルイゼ・アルベルツ・ハレ
 Luise-Albertz-Halle
・ヴィースバーデン
 Wiesbaden
クアハウス
 Kurhaus
・バンベルク
 Bamberg
ジョセフ・カイルベルト・ホール
 Josef-Keilbert-Haus
・ライプツィヒ
 Leipzig
ゲヴァントハウス
 Gewandhaus
・フランクフルト オーデル
 Frankfrt am Oder
CPEバッハ・ホール
 Konzerthalle C. Ph. E. Bach
・ベルリン
 Berlin
フィルハーモニー 大ホール
 Philharmonie
・フランクフルト マイン
 Frankfurt am Main
アルテ・オーパー
 Alte Oper
◇オーストリア連邦
・ザルツブルグ
 Salzburg
祝祭大劇場 コンサートホール
 Grosses Festspielhaus
・ウィーン
 Wien
楽友協会 大ホール
 Musikverein
◇日本国
・東京
 Tokyo
東京芸術劇場
 Tokyo Metropolitan Art Space
・白石
 Shiraishi
ホワイト・キューブ
 White Cube
・東京
 Tokyo
サントリーホール
 Suntory Hall, Main Hall

■公演期間

2003年2月中旬~2003年3月中旬

■参加人数

約180名

■随行指揮者

  • 曽我 大介(大阪シンフォニカー交響楽団音楽監督・常任指揮者、ルーマニア国立放送交響楽団首席客演指揮者)
  • 寺岡 清高(2000年ミトロプーロス国際指揮者コンクール優勝)
  • 田中 雅彦

■演奏曲目

  • ロッシーニ/歌劇「ウィリアム・テル」序曲
  • R.シュトラウス/交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」
  • ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」
  • 三枝 成彰/太鼓について<太鼓協奏曲>

■ソリスト

  • 野村/万之丞(狂言師)
  • 小笠原/匡(狂言師)
  • 稲葉/明徳(篳篥奏者)