連作交響詩「わが祖国」より第2曲「モルダウ」
スメタナはチェコ国民楽派の創始者として知られる。他国の支配下に苦しむ祖国を思って書かれたのが、6曲からなる連作交響詩「わが祖国」である。
「わが祖国」の第2曲「モルダウ」の着想は、スメタナが1867年のヒルシェンシュタインのチェニコヴァ・ピラ小旅行の際、モルダウ川の源流であるクシェメルナー川とヴィドラ川が合流する風景に感銘を受けたことによる。しかし、この着想はすぐには実を結ばなかった。チェコ民族運動が盛んになり、オペラによる民族運動の普及を目指していたスメタナにとって、もっとも多忙な時期であったためである。1874年春ごろ梅毒におかされスメタナは聴覚を失ってしまうが、創作意欲は燃え続け、連作交響詩「わが祖国」にとりかかった。「モルダウ」は1874年11月20日起稿、12月8日に完成された。ちなみに、「モルダウ」はモルダウ川を、「わが祖国」の第1曲「ヴィシェフラド」はモルダウ川のほとりに立つ城を描き、この時期に書かれたオペラ「リブジェ」はヴィシェフラドにて展開されるという関連性がある。
この曲はモルダウ川の流れと、それに伴う風景を描写した作品であり、以下の6つの部分からできている。
【モルダウの水源】
冒頭でフルートによって第1水源が描かれ、続いてクラリネットによる第2水源が現れる。また、ヴァイオリンのピッツィカート奏法により雫が落ちる様子が表現される。やがて川は大きな流れとなってゆき、弦楽器群によって水の動きが表現されるなか、オーボエと第1ヴァイオリンにより主要主題が演奏される。
【森の狩猟】
モルダウ川の流れは森に入っていき、川の流れを表現する弦楽器の上で、ホルンが勇ましく森の狩猟の角笛を響かせる。
【村の結婚式】
遠方より農民の婚礼の舞曲が聴こえ、次第に近づいてくる。これは木管楽器と弦楽器で演奏されるが、かなり民族的な要素の強い舞曲である。
【月の光・水の精たちの踊り】
やがて夜になる。弱音器をつけた弦楽器により月の光の情景が表現される。ハープが幻想的な雰囲気を醸し出すなか、フルートとクラリネットにより水の精の踊る様子が表される。美しい転調を経過した後しだいに音量を増し、主要主題が再現される。
【聖ヨハネの急流】
聖ヨハネの急流にさしかかると水の様子は一変し、岩にぶつかることによる激しい水しぶきがヴァイオリン、ヴィオラ、チェロによって巧みに表現される。ファゴットと低音弦楽器、続いて木管楽器により主要主題が形を変えて奏されるが、これまでとは一転、荒々しいものである。急流を抜け、モルダウ川はプラハ市内に入っていく。
【モルダウの大河の流れ】
誇らしく、希望に満ちた響きが流れる。連作交響詩「わが祖国」全体をまとめ上げる第1曲「ヴィシェフラド」の動機を引用しているが、ヴィシェフラドは他民族の支配を受けなかったころチェコ王たちが居城とした城で、再び独立と繁栄を願うスメタナの思いがこめられている。モルダウ川は町を眺めながらゆったりと流れ去っていく。

