リヒャルト・ワーグナーの作品

歌劇「リエンツィ」序曲

リヒャルト・ワーグナー
 

歌劇『リエンツィ』はワーグナーの3つ目のオペラ作品である。彼は当時、この作品をパリで上演したいと考えていたため、絢爛豪華な舞台と管弦楽法を有している。自身が後に告白したとおり、この歌劇の構想はイタリアの有名なオペラ作曲家であるスポンティーニ、フランス・オペラの代表者であるマイヤベーアから大きな影響を受けている。その苛烈な劇的効果ゆえに今日上演されることは少ないが、新鮮な旋律や巧みなアンサンブルには若き天才を聴くことができる。パリでの初演という当初の願いはかなわず、この作品はドレスデンでの上演となったが、結果的に初演は大成功となり、翌年ワーグナーはドレスデン宮廷歌劇場の楽長となった。若き天才作曲家の門出である。

あらすじは以下の通りである。14世紀ローマ教皇の公証人リエンツィは、貴族の専制政治に不満を持つ民衆の支持を得て護民官の地位に就く。多くの貴族は自らの利益のため、邪魔なリエンツィを暗殺しようとするが、貴族コロンナの息子アドリアーノはリエンツィの妹イレーネを愛しているためにこの勢力には加わらない。貴族オルジーニはリエンツィの暗殺を画策するも失敗し、彼の同僚であったコロンナも捕えられる。民衆は彼らの死刑を望むが、リエンツィはアドリアーノの願いを聞き入れて謀反者を許す。しかし、貴族たちはまたも反乱をおこし、リエンツィはこれを鎮圧、その中でコロンナは命を落とす。父の死を見たアドリアーノはリエンツィを呪う。新たに即位したローマ皇帝は教皇と結託してリエンツィを弾圧し、民衆の心もリエンツィから離れてゆく。父の敵討ちを望むアドリアーノは民衆の反感をあおり、人々はリエンツィとイレーネのいるカピトール宮殿に火を放つ。アドリアーノはイレーネを助けようと中に入るが、3人が炎に包まれる中、宮殿は崩れ落ちる。

序曲はきわめて自由なソナタ形式で、構成としてはポプリ( potpourri 接続曲)のタイプに属する。リエンツィによる招集を意味するトランペットに始まり、劇中の様々な動機が登場するが、貴族たちとの闘いの場面に登場する「戦闘の動機」(譜例1)、民衆からも教皇からも見放され、神に「再び力を与えたまえ」と祈る「リエンツィの祈りの動機」(譜例2)はとくに重要である。

譜例 1

譜例 2

(Cl.4 大森 脩史)