劇的物語「ファウストの劫罰」よりラーコッツィ行進曲
ドイツの文豪ゲーテによって書かれた戯曲「ファウスト」は、多くの作曲家に影響を与えた。ベルリオーズもその一人で、1828年に「ファウストの劫罰」の原型となる「ファウストの八景」を作曲している。その後、1843年のドイツでの演奏旅行や1846年のハンガリー旅行で大きな影響を受け、「ファウストの劫罰」を作曲した。この作品はベルリオーズの考案により‘Legende Dramatique’(劇的物語)とされ、四部20場からなる演奏用形式の作品となっている。
あらすじは以下の通りである。
苦悩するファウストは人生に絶望し、毒杯で自殺を図ろうとする。すると突然、悪魔メフィストフェレスが姿を現し、幸福と快楽を与えようという。メフィストフェレスは、ファウストを少女マルガリータに引き合わせる。そして鬼火の霊によってかけられた魔法で、ファウストとマルガリータのお互いの想いは燃え上がる。
場面は変わり、荒涼たる山の中で、メフィストフェレスは母親殺しの罪でマルガリータが絞首刑になるため、ファウストも劫罰を受けて地獄に行かねばならないと告げる。二人は黒馬で地獄へ走り、ファウストは奈落へ落とされる。一方マルガリータの魂は、天使達によって天上へと迎えられたのである。
「ラーコッツィ行進曲」は、ゲーテの原作にはない、ハンガリーの平原での場面である。この行進曲の主題はベルリオーズの作曲ではなく、ハンガリーにおいてラーコッツィの名でよく知られている歌の旋律を用いている。
トランペットとホルンによる勇ましいファンファーレから始まり、フルートとクラリネットにより主題が静かに奏でられる。やがて音楽が進むにつれオーケストラ全体の音量が大きくなり、トロンボーンと低音楽器による有名な主題が展開される。その勢いを保ったまま高弦と低弦それぞれの主題が交互に現れ、大太鼓が砲声のごとく鳴り響き、最後はtuttiで華やかに幕が降りる。

