交響的スケルツォ「魔法使いの弟子」
デュカスはパリ生まれのユダヤ人であり、パリ音楽院の管弦科や作曲科で教鞭も執った。完璧主義者として知られる彼は、納得のいかない作品を全て破棄してしまったといわれ、現存する作品は13曲程度である。
交響的スケルツォ「魔法使いの弟子」は、ゲーテの同名のバラード(物語詩)を基に書かれた。ゲーテはこのバラードを、古代シリアの作家ルキアノス(120年頃~180年頃)の短編「嘘を好む人たち」を基に書いている。これは、教養深く理性的な人々でさえも、荒唐無稽な話を信じ込んだり、それを人に吹聴して人を惑わせたりすることがしばしばあるということを諷刺した作品である。
それに基づいたゲーテのバラードのあらすじは以下の通りである。
ある日、魔法使いが家を空け、その弟子が1人で留守番をすることになった。弟子はその隙に勝手に魔法を使い、古箒に2本足で立って自分の代わりに家へ水を汲んでくることを命じる。箒は言われた通りせっせと水を運んでくるが、弟子は箒を止める呪文を忘れてしまい、家中が水で溢れても箒に水汲みをやめさせられない。やがて怒った弟子が斧で箒を叩き割ると、箒は2つに分裂して2倍の量の水を運び始める。弟子が溺れかけて叫んでいるところに魔法使いが帰館し、一言の呪文で箒の魔法を解く。
交響的スケルツォ「魔法使いの弟子」は1898年にパリで初演されて大好評を博した、近代フランスを代表する管弦楽曲である。全体は標題によって三部に分かれている。
まず序奏では、ヴァイオリンと木管楽器によって水汲みの呪文が奏でられる。ティンパニの一打と休止の後、スケルツォに入ると、トコトコと水を運ぶ箒がファゴットによって表される。水汲みのテーマは様々な楽器によって徹底的に繰り返され、次第に水が増していき、弟子の手に負えなくなっていく様子が巧みに描かれている。その後、怒った弟子は箒を叩き割ってしまうが、この部分は駒のごく近くを弓で演奏する「スル・ポンティチェッロ」という弦楽器の特殊な奏法により印象的に描かれている。一旦静けさを取り戻すが、すぐにファゴットによって割られた箒の半分が、続いてクラリネットによってもう半分が動き出す様子を表す水汲みのテーマが再び始まり、箒が2本になったことで、水の勢いはさらに圧倒的になっていく。途中、1番コルネットによって弟子の絶叫が表現されるが、箒の水汲みはそれを意に介せず続く。
コーダに入ると、金管のファンファーレで魔法使いの帰館が告げられ、呪文が唱えられて水は静まり、物語が終わる。
デュカスの得意とした精緻で徹底的な主題展開が存分に発揮された、色彩感豊かな作品である。

