ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの作品

フルート協奏曲第2番 ニ長調 K.314

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

モーツァルトが曲を書くときは、基本的にそれを演奏する“人”を念頭に置いていた。彼の有名なホルン協奏曲もヨーゼフ・ロイトゲープというホルン奏者のために書かれており、クラリネット協奏曲もアントン・シュタードラーという宮廷のクラリネット奏者に宛てて書かれた。

このフルート協奏曲も例外ではない。モーツァルトがマンハイムでの生活を始めた22歳のころ、裕福なフルート愛好家のオランダ人、フェルディナン・ド・ジャンからの作曲依頼が舞い込んだ。「アマチュアの私でも演奏できる、やさしいフルート協奏曲を3曲、フルート四重奏曲を2曲書いてくれ!200フローリンでどうだ!」。モーツァルトはこの依頼を引き受けたが、彼はフルート四重奏曲を依頼より多く3曲書いたのに対し、フルート協奏曲は2曲しか書かなかったうえ、その2曲目は1年前に書いたオーボエ協奏曲を移調しただけのものであった。ド・ジャンが作曲を急かしたせいもあるが、マンハイムでの生活は厳しく、モーツァルトもこの依頼はお金稼ぎとして請けたためにこのような転用をすることになったのである。そしてその2曲目というのがこのフルート協奏曲第2番である。

このような逸話を聞くと、この曲にあまり良い印象を持たないかもしれない。しかし同じケッヘル番号をもつ原曲であるオーボエ協奏曲は、モーツァルトがわざわざ転用しようとした曲だけあり、宮廷のオーボエ奏者であったジュゼッペ・フェルナンデスに捧げられたもので、実はサロン音楽、そして協奏曲の“傑作”である。それゆえこのフルート協奏曲第2番も同じく、当時の優美で繊細なロココの精神、ドイツ的な感性を存分に映し出す“傑作”となっている。ちなみにド・ジャンは、過去の曲を転用したモーツァルトに怒り、96フローリンしか払わなかったという。

第1楽章 : Allegro aperto ニ長調 4/4 拍子 協奏風ソナタ形式

典型的な協奏風ソナタ形式。オーケストラにより楽しげで明るい第1主題、柔らかで落ち着いた第2主題が同じ調で提示されると、フルートが駆け上がりながら颯爽と登場し、 2つの主題を振り返る。このとき第2主題は属調で提示される。展開部を足早に経て、型どおりの再現部を終えると、カデンツァが挿入され楽章は終わる。

第2楽章 : Andante ma non troppo ト長調 3/4 拍子 変則的なソナタ形式

弦楽器による分厚い序奏ののち、フルートが甘美な第1主題を唄いだす。その後第1ヴァイオリンと掛け合いながら第2主題を提示すると、展開部を経ずに再現部に入る。しかもこのとき第2主題のみが再現され、楽章は閉じられる。楽章中、変則的にも第1主題はたった1回しか演奏されない。

第3楽章 : Allegro ニ長調 2/4 拍子 変則的なソナタ形式

弾むようなロンド風の第1主題がフルート独奏でいきなり提示される。その後、第2主題が属調で提示されるのだが、続いて第1主題が繰り返される。再現部では型どおりに第2主題こそ主調で表れるが、結尾では第1主題がよみがえるため、この楽章は展開部を中間部としたロンド形式と捉えることもできる。また、この第1主題はのちに、オペラ「後宮からの逃走」のアリアにも転用されている。