狂詩曲「スペイン」
この曲は小曲ながら、シャブリエの名を一躍世界中に轟かせた楽曲である。
内務省の役人だったシャブリエは1880年に役人を辞めて音楽の道で生きる決意をした。その2年後に妻とスペインへ長期旅行し、スペインの街中に溢れる音楽を感じ取ったシャブリエは、旅行中にこの曲の構想を始めている。
曲はAllegro con fuoco へ長調8分の3拍子であるが、これを2通りのリズムとして解釈し、用いることでスペインの民族音楽の妙味を醸し出している。スペインで会得した微妙なニュアンスと活気に富んだ律動感が生かされている部分である。また、この曲がファリャのバレエ音楽「三角帽子」の終幕の踊りでも用いられたホタのテーマを使用していることがシャブリエ本人によって解説されている。
2台のハープがさざめく序奏部から始まる。シャブリエは2台のハープを編成に取り入れ,曲の要所で旋律楽器として効果的に使っており、曲はこの主題となる旋律がファゴットとトランペットによって奏され、楽器間を受け渡されていく。この主題はこの曲中随所に現れる。次いで低音楽器のユニゾンで第2の旋律が朗々と歌われるが、旋律中に出てくる3連音符による「小ぶし回し」的な動きなどにスペイン風な特色を見ることができる。ハープの分散和音で始まる中間部では、トロンボーンの奏でる印象的な旋律が、放逸な楽しさで聴き手を虜にする。最後に、初めに出された主題が次々と順序を追いながら、オーケストラ編成を変えて再現され、クライマックスへと高潮して曲を閉じる。
なお、この曲においても特殊な奏法の使用が色彩感をよりいっそう増している。中間部において主題が弦楽器によって再現される際より一層リズムが強調されるよう、弓の木の部分で弦を叩く「コル・レーニョ」と呼ばれる弦楽器の特殊奏法が用いられ、大きな効果を挙げている。

