楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より第1幕への前奏曲

リヒャルト・ワーグナー

楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は1867年、ワーグナーが54歳のときに作られた。彼の作品の中では数少ない喜劇色の強い作品として知られ、それまでの歌劇や楽劇のように超人的な力や神秘性を題材とせず、人間性をテーマに用いている点で特徴的である。マイスタージンガーとは、職人の親方として、また歌い手としても優れている者に与えられる「親方歌手」の称号である。本作品は16世紀中ごろのドイツのニュルンベルクを舞台に描かれている。

ニュルンベルクに現れた青年騎士ヴァルターは、金細工師の娘エーファと知り合う。エーファに惹かれたヴァルターは、ヨハネ祭の歌合戦に優勝したマイスタージンガーに彼女の婿となる権利が与えられることを知る。靴屋で親方歌手であるハンス・ザックスは、エーファに対し密かに恋心を抱いているが、エーファもヴァルターに心惹かれていることを知り、ヴァルターに歌の試験のための法則や歌い方などを教えることにする。途中、同じくエーファに恋するベックメッサーの邪魔が入るが、ヴァルターは見事に歌合戦で優勝し、彼女の花婿となる権利を獲得する。優勝したにも関わらずマイスタージンガーの称号を拒否するヴァルターに対し、ザックスがドイツ親方芸術の希望を説き、ヴァルターも納得して称号を受け入れ、無事エーファと結ばれる。最後は全員がこの結末を導いたザックスとドイツ親方芸術を高らかに讃えて幕が下りる。

第1幕への前奏曲は、ハ長調の全音階的進行を基盤に明朗な力強さを持って構成されている。厳かで堂々とした「親方歌手の動機」や優しく美しい「愛の動機」、力強い「親方歌手の行進の動機」など、楽劇中の登場人物や状況を表すライトモチーフが多く引用されているため、楽劇全体のハイライトを楽しむことが出来る。