フランツ・ヨーゼフ・ハイドンの作品

トランペット協奏曲 変ホ長調 Hob.Vlle:1

フランツ・ヨーゼフ・ハイドン

104曲もの交響曲を作曲し、作曲技法としてソナタ形式(2つの主題を持つ「提示部」「展開部」「再現部」からなる三部形式)を完成させた人物としても知られるフランツ・ヨーゼフ・ハイドンは、協奏曲の分野でもチェンバロやヴァイオリン、チェロなど相当数を作曲している。「トランペット協奏曲」はこれら協奏曲群の中でも最後の作品であり、伝統的な「急―緩―急」の3楽章形式をとった、ハイドンらしさにあふれる非常に充実した作品である。

第1楽章 : Allegro変ホ長調 4/4 拍子

「提示部」「展開部」「再現部」からなる三部形式をなす。ただし、ハイドンの完成させたソナタ形式とは異なり、単一の主題を持つ。厳格な構成による交響曲のような堂々たる響きを持った楽章である。

第2楽章 : Andante変イ長調 6/8 拍子

スコアにcantabile(歌うように)とあるように、伸びやかな歌心にあふれた楽章である。他の楽章でもそうだが、この楽章はとくに独奏トランペットとヴァイオリンの掛け合いが愉しめる。

第3楽章 : Allegro変ホ長調 2/4 拍子

この楽章では、再び第1楽章と同じ変ホ長調に回帰する。様々な技巧を駆使した独奏トランペットがオーケストラと堂々と渡り合い、華々しく曲を閉じる。

この曲を語る上で「アントン・ヴァイディンガー」というヴェニスのトランペット奏者について触れずにはいられない。以前、トランペットは全て現在でいうナチュラルトランペット(音程を調節するキーがついておらず、唇のみで音程を変化させて演奏する)であった。このような状況の中で、ヴァイディンガーは1770年代にトランペットに穴を開け、音程調節用のキーを取り付けた新たなトランペットを生み出した。これはそれまで演奏不可能であった低音域や半音階進行を演奏することが可能となる画期的な発明であった。もっとも、この新しいEs管トランペットは音質が悪く、今日のように音程調節用キーのついたトランペットが本当の意味で普及するのは後の改良を待たねばならなかった。

とはいえ、ヴァイディンガーの発明が画期的であったのは事実であり、このハイドンのトランペット協奏曲はヴァイディンガーのトランペットを意図して書かれたといわれている。このことは、独奏トランペットのパートがEs管トランペットで書かれ、Es管トランペットの自然音階である変ホ長調が採用されていることや第1楽章冒頭で従来なかった低音域が出現することなどより見て取ることができる。